主人公の赤松は、どう贔屓目に見てもよくいるヒーローとは言いがたく、むしろ私の嫌いな頑固親父タイプ。話はこの赤松を中心に展開していくのですが、世間や組織の中で悩み苦しむ男たちが、それぞれの答えを見つけながら少しづつ前進していく様は、誰もが感情移入しのめり込むはずです。
それと、例えばホープ自動車の狩野であったり、同じ小学校の保護者の片山、真下、それに東京ホープ銀行の巻田などなど、いたるところに現れるイヤな所謂敵役に配置された登場人物たちがさらにのめり込ませる要因になっていたのかと感じています。この人達は徹底的にありえないくらい「悪」です。救いようがないぐらい。この「悪」に対して立ち向かう赤松やホープ自動車の沢田に読者は感情移入せざるをえないはずです。
しかしながら、この小説は本当に後半の後半、マラソンで言えば40キロぐらいに差し掛かるまで、赤松や沢田に対する未来への希望が見えてきません。箇所箇所で言えばそれなりに救われる描写もあるのですが、物語の軸になっているホープ自動車のリコール隠しの決定的な証拠が描かれるのは本当に最後の方なのです、それ故、ここまで暗澹と読み進めた読者はきっとその瞬間アドレナリンが湧き上がって興奮してしまうこと請け合いです。
また終盤全てが解決していくさまは本当に清々しく、後味も非常にいい小説です。
池井戸さんの他の作品はドラマ化された『鉄の骨』にも興味があり、そのうち読みたいと思っているのですが、他の作品も手にとってみようと思います。
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